組織変更について軽く考える

今所属している組織は結構頻繁に組織変更が実施される。これまでの2年間を考えても自分の仕事に影響のある身近な変化からトップのレベルの変更まで複数回経験している。今年も例にもれず組織変更が議論されている。

組織変更は変わっていく(拡大していく)組織で決定のスピードを保つこと、それからCustomerとの距離が組織の拡大にあわせて遠くなっていくことを防ぐこと、一方で組織のメリットのようなものを失わないこと、あたりを念頭において進められると思う。中にいて面白いのは組織の拡大スピードをコントロールすることはとても難しいし、組織の拡大していく方向性を定めるのもとても難しい、ということを実感として感じられることだ。良いプロダクトがあればその需要はどんどん高まるし、そのプロダクトがプラットフォームとして使えるのであれば、派生する製品のアイディアもどんどん産まれてくる。結果としてエンジニアリング部門は拡大が必須になる。もちろん、TPMやLaunch周りのスタッフも増強が必要になる。すべては成長のおかげで回るフライホイールなので、会社の理念にあっている。

書き始めたときには「後追いの組織変更ってどうなんだろう」ということを考えていたのだが、書き始めて考えてみると「ビジネス拡大に対していかにシンプルな組織をデザインしていくか」というのが成長する組織が常に直面する課題なんだな、と当たり前のところに考えがたどり着いてしまった。後追いしないでまずは目指す姿を描くべきではないか、なんて考えていたけれどもそんなもの当たらないしとにかく順応していくというのが正しい姿勢なのだろう。

 

システムについて考えること

かつて、蒸気タービン発電機を製造する会社で働いていたことがある。当時の組織なので今がどうなのかは全く知らないけれど、タービン、制御、発電機、それから全体のコントロールシステム、のそれぞれが別の部署で設計、製造されていた。

 

タービン屋さん:蒸気タービンを設計する部隊。例えば、全体の効率計算といったところから、タービンの Engineering for Manufacturing までを担当。流体力学や熱力学、材料力学といった機械工学専門のエンジニア集団。

制御屋さん:タービンを稼働する制御弁を設計する部隊。制御弁の機械的な設計から、コントロールシステムとのやり取りの仕様決定あたりまで幅広く。制御工学が中心のエンジニア集団。

発電機屋さん:タービンと直結されている発電機の設計する部隊。発電機の基本設計から Engineering for Manufacturing まで。どちらかというと、Engineering for Manufacturing の占める割合が大きいが、電気工学、材料工学も必要とされる。

コントロールシステム屋さん:全体の制御システムを設計するチーム。いわゆる Software Development Engineer というよりは、システムインテグレーター寄りな感じ。

 

私は中途入社で色んなチームを6か月単位でローテーションさせてもらったのだが、「誰が全体像を描いてるんだろう?」というのが、当時不思議に思っていたことだった。タービン屋さんが全体を主導していることが多いのだけれども、結果としてコントロールシステムのポテンシャルを引き出せていないような気がしていたし、一方でコントロールシステム屋さんは全体を率いるには、全体像の理解が欠如していた印象だった。

 

Thinking in Systems という本を読んでいて、ふとあの頃のことを思い出した。今自分が考えていることにつながるメッセージがそこかしこにあったのだけれど、そのなかで最終章に紹介されている「システムの世界で生きるための xx 箇条」のタイトルだけ紹介する。もし興味を惹かれたら、ぜひ本を読んでみてください。ちなみにそれぞれの下に書かれている日本語は私の勝手な意訳。

 

  • Get the beat of the system
    その対象をコントロールしているシステムを理解しよう
  • Expose your mental models to the light of day
    自分の中にあるシステムのモデル(対象について考えるときに当てはめる考え方)を描きだそう
  • Honor, respect, and distribute information
    情報の流れがシステムの挙動を左右する。意識的な情報の伝達を心がけよう
  • Use language with care and enrich it with systems concepts
    考えは言語化することで伝わり、影響する。言語化に注意を払おう
  • Pay attention to what is important, not just what is quantifiable
    定量化できるパラメータに注目するのではなく、システムにとって大事なことに目を向けよう(つまり、観測、計測に先立って何が大事なのかを考えよう)
  • Make feedback policies for feedback systems
    正しいシステム設計は、自分の意図とシステムのインセンティブが同じ方向に向いている設計である。システムが独自に軌道修正するようなフィードバックの仕組みを作ろう。
  • Go for the good of the whole
    全体にとって良い影響がある場所に集中しよう
  • Listen to the wisdom of the system
    今そこにあるシステム(仕組み)をきちんと理解してから、その改善や入れ替えを考えよう。
  • Locate responsibilities in the system
    現存するシステムを理解するときには、何がシステムを動かしているのかを理解しよう。
  • Stay humble – stay a learner
    謙虚に学び続けよう
  • Celebrate complexity
    複雑であることを喜んで受け入れよう
  • Expand time horizons
    短期間の利益を考えるのではなく、長期間で考えよう
  • Defy the disciplines
    自分の専門外に立ち向かっていこう
  • Expand the boundary of caring
    自分の範囲だけを考えるのではなく、視座を高めよう。
  • Don’t erode the goal of goodness
    信念を曲げないで立ち向かおう

 

www.amazon.co.jp

ちなみに、私が今いる会社には System Architecture というグループがいて、ここには System Architects たちが部門を横断するシステムの設計を主導している。今、あの会社はどうなってるんだろう。

 

ダイバーシティを推進すること

仕事で起きたとある出来事をきっかけに、ダイバーシティについて考えている。同僚やメンターに相談しているなかで、The Loudest Duck という本を勧めてもらった。早速ポチった。週末には届く予定。

 

なぜ、この本を勧めてくれたか、というのがネタバレだけれども、このブログ記事に書かれている。

We Hire For Difference and Fire Because They Are Not the Same | Leading Blog: A Leadership Blog

いわく、Diversity を推進するというのはたやすいが、それを実行するには心がけ(Intention)ではなく方法(Mechanism)が必要だという話。そして、その方法を紹介している、らしい。週末にちゃんと読む予定。

 

僕は今、アメリカの会社で多国籍のメンバーを率いる立場にいて、Diversity について考えやすい立場にいると思っている。自分の常識は通じないものと思っているからだ。でもそれだけでは、全く足りない。想像していなかった考えや意見について、違い(difference)を間違い(mistake/wrong)と考えていないか、判断する前に時間を取って考えることから始めてみる。

 

 

 

 

母国語は文化になるのか

VRによる同時翻訳サービスの実験を経て、母国語以外を使用することを『禁止』するというプレスリリースの記事が流れてきた。

prtimes.jp

プレスリリースより抜粋

人種や性別とまったく同じように、英会話力など、本業の能力とは何の関係もありません。英語ができる無能な人が重宝され、本当に実力のある人々が抑圧される暗黒時代はもう終わったのです。英語ができないだけで不遇な目に会っていた、優秀で素晴らしき人達。あなた方はついについに、檻から解放されたのです。自由に、羽ばたいてください。思う存分、きらめいてください。

これを読んで頭に浮かんだのは、司馬遼太郎がアメリカ素描に書いた、文明と文化の定義だ。文明とは普遍的なもの、文化とは特定の集団にのみ通用する特殊なもの、と定義している。

同時翻訳サービスは、母国語という各言語圏の文化を、文明へと変化させる触媒のように見えた。例えば、襖は文化だけれども、もし自動で開閉する自動襖になると、文明と見ることができる。ただし、この例でいうならば、襖を家の設備として誰もが活用することは可能になるが、襖の開閉の作法(まず少し開けてから両手で開ける)は継承されないので文化から文明へと変化する過程で、そぎ落とされるニュアンスがある。

同時翻訳にも、当然にそぎ落とされるニュアンスがある。ただ、ビジネスにおいては問題ないと思う。どんな活用例が出てくるか、興味深い。

 

語学はPDCAサイクル

今の会社に入って、SQLでデータを取得する、サイズの大きいデータを処理して意味を読み解く、Whitepaperを書く、などの今までの社会人生活では必要とされなかったスキルを習得する必要に迫られた。自分がとった方法は、社内データベースにある過去の例を手当たり次第に眺めて、Best Practiceを集めて、それをつなぎ合わせて自分のものにしていく、という方法だった。スキルを習得した、というよりも、How-toを自分用に仕立て上げた、という方が正確かもしれない。

 

今朝、そんな作業をしていたときに(データを捌くのにPythonに移っていこうと思って習得中)ふと、「これって語学習得で常にやっていることだ」と思った。自分の英語はビジネスをするには、まあ何とかなるけれども、とても流暢からは程遠いレベルにある。ということで、改善の日々である。自分の語彙力を増やすうえで心掛けていることは、会話の中で人が使っている言い回しを自分の発言に取り入れていくことである。例えば、"Devil's advocate" という言い方がある。これは、「あえて重箱の隅をつつくような質問をするけど」みたいなときに使う。こちらに来てから聞くような言い回しで、最初に聞いたときは、「何それ」と思ったけれど、意味が分かってからは使ってみて、反応を見て取捨選択している。この、「反応を見る」というのが結構重要で、意味が分かっていて使い方が正しくても、どうしても発音が難しくて、スッキリと相手に入らないことがある。こういうのは、さっぱり諦める。発音は努力してるけど、とりあえず使える武器を選んでいかないとしょうがない。*1

 

面白いのは、こうした意識をしていると「最近頻繁に使われるようになった言葉」みたいなものに気づく。例えば、こちらに来てすぐのころに「churn」という言葉を頻繁に聞いた。やり直し、手戻り、みたいな意味で使う。こういう、最近頻繁に使われる言葉を意識することで、今の焦点みたいなものが透けて見えてくる。自然と、今習得を目指すべき言葉が分かってくる。

 

翻って仕事のスキルの例を考えると、周りの作業に目を向けてそこから技を盗んでいく、という意識でいると、自然と必要に即したスキルを身に着けていくことができるのではないかと思う。

 

 

 

*1:最初にアメリカに来た頃、やたらとMTVを観ていて、Rob & Big の中で使われる言い回しを職場だった工場で試しては、同僚に不思議な目で見られてたのを思い出す。。。

どんな人に認められたいか

「大人たちにほめられるような馬鹿にはなりたくない」という記事について、今でも時々考える。

kaz-ataka.hatenablog.com

僕は自分で頭を使うことを忘れて簡単に流されてしまう人間なので、これがなかなかに難しい。僕なりの答えは、「この人に真っすぐでいられる人間かどうか」と思える人を考えておいて、その人との会話を想像することが決断を支えてくれる。その相手は身近な人でもいいし、過去の人でもいいし、最近良いなと思っている人でもいい。でも、そういう「いいなと思える人」をじっくり考えて見定めておけば、判断は自ずと良いものになるのではないかな、と思っている。

未来は作り上げるもの

Peter Thiel の最後の質問に対する回答が、あまりに刺さったのでここに書き記しておく。

 

(以下、インタビューからの書き起こし)

This always sounds too ambitious or too grandiose but I would like to get our society to get back to the future, to get back to a society that's progressing in all these important dimensions. There's sort of a very local way of doing that which is investing in futuristic technology company. That's a small manageable way you do this. And then there's broader conversations like the one we're having today where we try to get people to think about this topic. But its' yeah we need to think about the future arrives it will be different from the present and if we don't think about it, it's much less likely to be a good future than if we work to craft it.

 

(意訳)

大げさに聞こえるかもしれないけれど、未来に向かって進んでいく社会を取り戻したいんだ。そのために、自分ができることとして、未来の技術を実現しようとしている企業に投資している。また、こうしたあなたとの今日の会話が、人々が未来について考えるきっかけになればいいと思っている。みんなで未来を考えて作り上げていかないと、良い未来は訪れないからね。

 

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