風力発電のニュースを読んで vol. 2

前回の記事の続きです。


前回の記事で、風力発電には大きなポテンシャルがあるが、その一方で難しいビジネスになるのではないかと書きました。その理由として、以下で説明します。



上記のデータは、風力発電の設置容量を国別に調べたものです。2008年のデータでは、アメリカが世界一になっているはずですが、2007年時点ではドイツが世界一の発電能力でした。以下、スペイン、インド、中国と続いています。ここには、日本のデータは出ていませんが、日本は、2008年で約1800MWで、ドイツやアメリカの10分の1程度にとどまっています。


次に、前回の記事に掲載したアメリカ国内の風力発電のシェア上位各社をそれぞれの本社がある国と併せて見てみます。

  1. GE Energy (アメリカ)
  2. Vestas (スペイン デンマーク)
  3. Siemens (ドイツ)
  4. Suzlon (インド)
  5. Gamesa (スペイン)
  6. Clipper (アメリカ)
  7. Mitsubishi (日本)
  8. Acciona (スペイン)
  9. REpower (ドイツ)


一目瞭然ですが、発電容量が上位の国のメーカーが10社中9社を占めています。(その中に三菱重工が食い込んでいるのは、さすが日本のメーカーだなと思いますが。)


誤解してしまいそうなので繰り返しますが、これは世界のシェアではなくて、米国の風力発電のシェアトップ10社です。つまり、自国の発電容量が高い国のメーカーが、海外進出にも成功していると言うことがいえるのだと思います。


これは、至極当然と言えばそうなのかもしれません。自分の国で高めた技術力を持って海外に進出する、と言うのが自然な成長のモデルでしょう。私は、火力発電に関わる仕事に就いていますが、火力発電の分野での日本のメーカーの海外進出の過程も、日本で高めた技術力を持って海外に進出していく、という形をとっていると感じます。実際に例えば発電効率を高める、もしくは製品寿命を延ばすような技術革新においても、まず国内の発電所に納めて、実績を積んでから海外に売り込む、と言うケースが一般的だったりします。


となると、自国に大きなマーケットが存在しない場合、海外進出が非常に難しくなります。おそらく、日本のメーカーが火力発電ほどに存在感を発揮できていないのも、そのような原因もあるのではないかと思います。


そんなことを考えていた矢先に、このようなニュースを読んだのです。カナダのOntario州の100億ドル相当の風力発電計画を韓国のSamsungが入札したと言うニュースです。韓国は、風力発電容量の上位国ではありません。(韓国の発電容量を探してみたのですが、見つけられませんでした。)


私は、伊藤洋一さんのポッドキャストが好きで毎週聞かせていただいているのですが、そのなかで伊藤さんが最近何度か話されていたSamsungやNokiaの話を、このニュースは連想させます。自国にマーケットが無いことを前提でビジネスを構築している姿が、この風力発電の入札にも見られる、と私は感じました。


ここで、前回の記事の結びの一文に戻るのですが、世界に目を向けると、風力発電には大きな可能性があるのは事実です。ただ、一方で日本国内の風力発電のマーケットは、成長の期待があまり大きくない。となると、国内に目を向けるのではなく、最初から海外に目を向けた戦略が必要になる、そしてそれは、これまで重電各社が経験してきたビジネスとは異なるビジネスモデルである、ということではないでしょうか。


ただ、海外に最初から目を向ける戦略、と言ってしまうのは簡単ですが、実際に行動に移すには様々なリスクが伴うのは明らかです。逆に言うと、SamsungやNokiaが、どのように海外進出を進めていったのか、その過程を知ることは、とても勉強になると思います。


これから、少し調べてみようと思います。



( 2.21.2010 追記) Vestasはデンマークの会社でした。デンマークは風力発電が盛んでらしいですが、電力需要が小さいので発電量を見ると世界上位には入ってきていません。自国内に大きなマーケットが存在する=海外展開が可能、と言うパターンがほとんどだと思ったのですが、そうでもないようです。